安置場所で悩む前に。自宅安置と式場安置それぞれのメリット・デメリットをご案内
最終更新:2025-11-30
ご身内が亡くなられた直後は、深い悲しみの中で多くの決断を迫られます。
特に、ご遺体をどこに安置するかは、速やかに決定しなければならない重要な事柄です。
ご遺体の安置場所には、住み慣れたご自宅や葬儀社の斎場など、いくつかの選択肢があります。
本記事では、それぞれの安置場所のメリット・デメリット、費用の目安、搬送までの流れを解説し、ご遺族が落ち着いて最適な場所を選べるよう情報を提供します。
そもそも遺体の「安置」とは?葬儀まで故人様と過ごす大切な時間
「安置」とは、病院や施設で亡くなられた故人のご遺体を、通夜や葬式までの間、適切な場所に寝かせてご供養することを指します。
ご逝去後、ご遺体はすぐに火葬されるわけではなく、法律で定められた期間、安置する必要があります。
この期間は、ご遺族が故人と共に過ごす最後の貴重な時間であり、心を落ち着けてお別れの準備を進めるための大切な時間となります。
故人にとっても、安らかに旅立つための準備期間とされています。
法律で定められた安置期間は24時間以上
日本の法律「墓地、埋葬等に関する法律」では、原則として死後24時間を経過しなければ火葬を行うことができません。
これは、万が一の蘇生の可能性を考慮しているためです。
このため、ご逝去から最低でも24時間はご遺体を安置する必要があります。
実際には、葬儀の準備や火葬場の空き状況などにより、安置期間は2〜3日、場合によってはそれ以上に及ぶこともあります。
この期間、ご遺体の状態を適切に保ちながら、故人を偲びます。
ご遺体の安置場所にできる3つの選択肢
ご遺体を安置する場所は、主に「自宅」「斎場や葬儀社の安置施設」「民間の安置施設」の3つの選択肢から選ぶことになります。
それぞれの場所には異なる特徴があり、ご遺族の状況や故人の遺志に合わせて選択することが重要です。
どの安置所を選ぶかによって、費用のほか、故人との過ごし方や面会のしやすさも変わってきます。
それぞれの選択肢について、具体的な内容を確認し、ご家庭の状況に最も適した場所を検討することが求められます。
1. 住み慣れた自宅
故人が生前長く過ごしたご自宅にご遺体を安置する方法は、多くのご遺族にとって自然な選択肢の一つです。
住み慣れた環境で、他の人の目を気にすることなく、家族だけでゆっくりと最後のお別れをすることができます。
安置するためには、ご遺体を寝かせるための布団とスペースの確保、そして室温を適切に保つためのエアコン設備が必要です。
特に夏場はご遺体の状態を保つために、十分な配慮と準備が求められます。
2. 斎場や葬儀社が管理する安置施設
葬儀を執り行う斎場や葬儀場に併設された、あるいは葬儀社が提携している専用の安置施設を利用する方法です。
これらの施設は、ご遺体の管理に最適な温度や湿度が保たれており、専門のスタッフが管理するため安心して任せられます。
自宅に安置するための十分なスペースがない場合や、弔問客の対応が難しい場合に適しています。
また、安置場所から葬儀場への移動が不要なため、一連の流れがスムーズに進むという利点もあります。
【選択肢別】安置場所ごとのメリットを解説
ご遺体の安置場所を選ぶ際には、それぞれのメリットを理解しておくことが大切です。
住み慣れた自宅、設備の整った斎場や葬儀社の施設、そして柔軟な利用が可能な民間施設では、故人との過ごし方やご遺族の負担が異なります。
例えば、付き添いが自由にできるか、面会時間に制限はあるかなど、ご遺族が故人とどのように最後の時間を過ごしたいかを考えながら、それぞれの利点を比較検討することが、後悔のない選択につながります。
自宅で安置するメリット
自宅で安置する最大のメリットは、時間を気にすることなく、故人と心ゆくまで一緒に過ごせる点です。
面会時間の制限がないため、家族や親しい友人がいつでも弔問に訪れることができます。
また、住み慣れた我が家から故人を送り出してあげたいというご遺族の想いを叶えることも可能です。
斎場などの施設利用料がかからないため、ドライアイスなどの費用は必要ですが、全体的な費用を抑えられる傾向にあります。
斎場・葬儀社の施設で安置するメリット
斎場や葬儀社の施設を利用するメリットは、ご遺体の管理を専門家に一任できる安心感にあります。
温度管理が徹底された専門施設であるため、ご遺体の状態を最適に保つことができ、特に夏場でも心配がありません。
また、自宅の片付けや弔問客の対応に追われることなく、ご遺族は故人を偲ぶことに集中できます。
集合住宅などでご遺体の搬入が難しい場合や、プライバシーを確保したい場合にも適した選択肢です。
【選択肢別】安置場所ごとのデメリットと注意点
安置場所を決定する際は、メリットだけでなくデメリットや注意点も十分に把握しておく必要があります。
自宅安置の手間や精神的な負担、施設利用時の面会制限や料金など、それぞれの選択肢が持つ課題を理解することで、後々のトラブルを避けられます。
ご家族の状況や環境、そして故人との理想のお別れの形を考え合わせながら、総合的に判断することが、悔いのない選択をするための鍵となります。
自宅で安置する際のデメリットと注意点
自宅で安置する場合、ご遺体を寝かせるためのスペースを確保しなくてはなりません。
仏間や客間など、少なくとも布団一組分と枕飾りを置く広さが必要です。
また、ご遺体の状態を保つためにエアコンで室温を18度以下に維持し、葬儀社に依頼して定期的にドライアイスを交換してもらう必要があります。
弔問客が訪れる際の対応や、集合住宅の場合はエレベーターでの搬入経路の確認など、ご遺族側で準備すべきことが多い点も考慮しなければなりません。
斎場・葬儀社の施設で安置する際のデメリットと注意点
斎場や葬儀社の施設では、面会時間が定められている場合が多く、夜間の付き添いができないこともあります。
いつでも自由に故人と会えるわけではない点は、デメリットと感じる可能性があります。
また、施設利用料が1日単位で発生するため、安置期間が長引くと費用がかさむことも考慮が必要です。
利用を検討する際は、面会時間や付き添いの可否、安置設備の仕様(冷蔵安置かドライアイス安置か)などを事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
【場所別】ご遺体の安置にかかる費用の目安を比較
安置場所を決める上で、費用は重要な判断材料の一つです。
自宅、斎場や葬儀社の施設、民間施設では、それぞれかかる費用の内訳や相場が異なります。
ご遺体の搬送費用やドライアイス代、施設利用料など、どのような費用が発生するのかを事前に把握しておくことで、予算に合わせた最適な選択がしやすくなります。
ここでは、それぞれの安置場所でかかる費用の目安を比較し、解説します。
自宅で安置する場合の費用内訳
自宅で安置する場合、場所代はかかりませんが、ご遺体の状態を保つための費用が必要です。
主にドライアイス代と、枕元にお供えする「枕飾り」のセット費用が発生します。
ドライアイスは1日あたり10,000円から20,000円程度が目安で、夏場や安置日数が長くなる場合は追加が必要となり、費用も増えます。
枕飾りの費用は葬儀プランに含まれていることもありますが、別途用意する場合は10,000円から30,000円程度が目安です。
斎場や葬儀社の施設で安置する場合の費用内訳
斎場や葬儀社が所有する施設に安置する場合、1日あたりの施設利用料がかかります。
費用の相場は1日につき10,000円から30,000円程度です。
この料金には、安置室の使用料のほか、ご遺体の管理費用やドライアイス代が含まれていることが一般的です。
ただし、施設によってはドライアイス代が別途必要になる場合もあるため、契約前に費用の内訳をしっかりと確認することが大切です。
病院から安置場所へご遺体を搬送するまでの手順
ご家族が病院で亡くなられた場合、ご遺族は限られた時間の中でご遺体の搬送と安置場所の決定を行わなければなりません。
病院の霊安室は一時的な待機場所であり、長時間利用することはできないためです。
突然のことで動揺する中ですが、手順を把握しておくことで、落ち着いて対応を進めることができます。
ここでは、病院から安置場所へご遺体を搬送するまでの具体的な流れをステップごとに解説します。
STEP1:安置する場所を速やかに決定する
医師から臨終を告げられた後、まず最初に行うべきことは、ご遺体をどこに安置するかを決めることです。
病院の霊安室は次のご逝去者も利用するため、長くても数時間しか滞在できません。
自宅に安置するのか、それとも斎場などの施設を利用するのか、事前に家族間で話し合っておくと、いざという時にスムーズに決定できます。
もし決まらない場合は、葬儀社に相談して仮の安置場所を確保することも可能です。
STEP2:搬送を依頼する葬儀社を手配する
安置場所が決まったら、ご遺体をその場所まで搬送してくれる葬儀社を手配します。
法律上、ご遺体の搬送は許可を得た事業者でなければ行えません。
病院から葬儀社を紹介されることもありますが、ご自身で事前に探しておいた葬儀社に連絡することもできます。
葬儀社に連絡する際は、病院名と故人のお名前、お迎えに来てほしい時間を伝え、寝台車での搬送を依頼します。
STEP3:医師から死亡診断書を受け取る
ご遺体を病院から搬送する際には、医師が発行する「死亡診断書」が必ず必要です。
この書類がないと、ご遺体を移動させることができません。
また、死亡診断書は役所への死亡届の提出や火葬許可証の交付手続きにも必要な大変重要な書類です。
受け取る際には、故人の氏名や生年月日などに誤りがないかを必ず確認しましょう。
通常、葬儀社が搬送に来るまでの間に看護師から渡されます。
もし安置期間が長引く場合は「エンバーミング」も検討
火葬場の予約が混み合っている、あるいは遠方の親戚が到着するのを待つなどの理由で、ご遺体の安置期間が1週間以上に及ぶケースも少なくありません。
このような場合、ドライアイスだけではご遺体の状態を維持することが難しくなります。
その際の選択肢として「エンバーミング」が挙げられます。
これは、ご遺体に防腐・殺菌・修復処置を施す技術で、長期間にわたり衛生的にご遺体を保つことが可能です。
また、生前の安らかなお姿に近づけることもでき、穏やかなお別れにつながります。
安置中に行われる故人様のためのケアや儀式
ご遺体を安置している期間は、ただ葬儀を待つだけの時間ではありません。
故人が安らかに旅立てるよう、様々なケアや儀式が行われます。
これらの儀式は、故人の尊厳を守ると同時に、ご遺族が死を受け入れ、故人との最後の時間を大切に過ごすための重要なプロセスです。
具体的には、ご遺体を清める「湯灌」や「清拭」、旅立ちの身支度を整える「死化粧」や「死装束」などがあります。
故人の体を清める「湯灌(ゆかん)」や「清拭(せいしき)」
湯灌とは、専用の移動式浴槽を使ってご遺体をお湯で洗い清める儀式です。
単に体を清潔にするだけでなく、現世での悩みや苦しみを洗い流し、来世への旅立ちを清めるという意味合いがあります。
一方、清拭は、アルコールを含ませた脱脂綿などでご遺体を拭き清める方法です。
病院で亡くなった場合、看護師によって行われることもありますが、葬儀社にあらためて依頼することも可能です。
どちらも故人の尊厳を守るための大切なケアです。
安らかな旅立ちのための「死化粧」や「死装束」
死化粧(エンゼルメイク)は、故人のお顔に化粧を施し、生前の穏やかな表情に近づけるためのケアです。
髪を整え、爪を切り、男性であれば髭を剃るなど、身だしなみを整えます。
ご遺族が化粧を施すことも可能です。
死装束は、故人が旅立つ際に着せる衣装のことで、仏式では白地の経帷子(きょうかたびら)が一般的ですが、近年では故人が生前愛用していた服や、希望のスーツ、ドレスなどを着せるケースも増えています。
まとめ
ご遺体の安置場所には、自宅、斎場や葬儀社の施設の2つの選択肢があります。
それぞれにメリットとデメリットが存在するため、故人やご遺族の意向、費用、面会のしやすさなどを総合的に考慮して決定することが重要です。
自宅安置は故人と気兼ねなく過ごせる一方、施設の利用は専門的な管理による安心感が得られます。
安置期間は故人と過ごす最後の大切な時間です。
葬儀社とよく相談し、情報を整理した上で、悔いのないお別れができる最適な場所を選択してください。





